ななみとこのみのおしえてA・B・C SS 「初めてのラブレター」 一日の授業を終えた西村姉妹は、 いつものように2人仲良く帰ろうとしていた。 キーンコーンカーンコーン このみ「ふええ、今日宿題多すぎだよぉ…     あたし算数にがてぇ~」 ななみ「大丈夫だよこのみちゃん。ななみも教えてあげるから」 このみ「ほんとっ ななみちゃん!?約束だよ?」 ななみ「うん!あ、あれっ…?」 下駄箱から靴を取り出そうとしたななみの手が、ふと止まる。 このみ「どしたの ななみちゃん?」 ななみ「うん…何か、お手紙が…」 手紙を開けたななみの 雪のように白い頬が、 みるみる内に赤く染まる。 ななみ「え…こ、これって…///」 このみ「なななななみちゃん!!ラブレターだよっ、ラブレター!!」 ななみ「そそそんなはずないよ…!ななみがそんなの貰えるわけないよ、     誰かと間違えたんだよ…!」 手紙に夢中になっていた2人の後ろに、 いつの間にやら 興味津々で覗きこむ4つの顔があった。 さおり「なになにー?『廊下や帰り道であなたの姿を見かける度、     いつも僕の胸はときめいていました。     もっともっとななみさんのことを知りたいです』だってー!?」 しおり「さ、さおりちゃん…声に出して読んじゃ…///」 まいな「間違いないわね。どこからどう見てもラブレターよ!」 ゆうな「らぶれたー…?って、なぁに?」 ななみ「わっ、わっ!?さおりちゃんしおりちゃん!?」 このみ「ゆうなちゃんとまいなちゃんまで…い、いつの間に…」 さおり「しっかり『ななみさん』って書いてあるし、     他の人と間違えたってセンも無さそうねー」 まいな「しかもこれ、隣のクラスの綾小路クンからじゃない!?」 しおり「あっ、知ってる…お勉強できてスポーツも凄く得意なんだって。     うちのクラスの女の子がよく噂してるよね」 このみ「でも確かに ななみちゃんって結構男子に人気あるもんね~」 ななみ「え、えっ!?こ、このみちゃん何言ってるの…!?」 このみ「あれ、知らない?この前もクラスの男子が     『西村ってよく見ると可愛いよな』って言ってたよ?」 ななみ「や、やぁん…そんなの知らないもん…///」 さおり「まあ、男はななみちゃんみたいな     大人しい子にコロッと行くもんなのよね~     でもこのあたしの魅力に気付けないなんて     まだまだお子ちゃまよね!」 このみ「で、ななみちゃんどうするどうする!?     お返事するの!?」 ななみ「えっ…!?きゅ、急に言われてもわかんないよぉ…」 まいな「まあでも、綾小路クンのことだから     返事しなかったらしなかったで催促とかしてきそうよね~」 ななみ「そ、そうだよね…お手紙くれた人に     お返事もしないのは失礼だよね…」 しおり「でも…焦らなくていいと思うよ」 ななみ「うん、ありがとう しおりちゃん。     あ、そういえば…     このみちゃん、今日体操クラブの日じゃなかった?」 このみ「あっいっけなーい!忘れてた!     ななみちゃん早く帰ろ!ごめんねみんな、あたし達先行くね!」 まいな「あっうん、気をつけてね」 ゆうな「ばいばーい♪」 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ 西村姉妹・朝倉姉妹と別れた観月姉妹は、並んで家路についていた。 さおり「全く、ななみちゃんもスミに置けないわね~     このあたしでさえ ラブレターなんか貰ったことないってのに!」 しおり「わたしも貰ったこと無いけど、でも貰っても困っちゃうよ。     わたしには おにいちゃんがいるし…」 さおり「ま、まああたしも おにいちゃん以外の男なんか眼中にないけどさ…     あれっ、噂をすれば…」 観月姉妹の前を横切ろうとしていた大学生風の青年が、 2人に気付いて声をかける。 雅尚「あっ、しおりちゃんさおりちゃん。今帰り?」 しおり「雅尚おにいちゃん!こんにちは」 さおり「うわっ、おにいちゃん汗びっしょりじゃない!」 雅尚「あはは、今日は結構 残暑厳しかったからね。    帰ったらすぐシャワー浴びないと」 さおり「もうっ…もうちょっと身だしなみにも気を遣わないと、     女の子に逃げられちゃうわよー?     ななみちゃんなんて 男の子達にも人気あるんだから」 雅尚「まあ、2人とも可愛いからね」 さおり「のんきに言ってる場合?今日ななみちゃん、     隣のクラスの男子からラブレター貰ったのよ?     しかも すっごいカッコ良くてモテモテな子!」 雅尚「えええっ!?らららラブレター!?」 しおり「さおりちゃん、それ言っちゃっていいの…?」 さおり「どうするー?     ななみちゃんが その子にクラッと行っちゃったら。     おにいちゃんぴーんち!」 雅尚「ラブレター…ななみちゃんにラブレター…    モテモテの男子から………」 しおり「さおりちゃんってば、イジワルだよぉ…     あ、でもね雅尚おにいちゃん。     ななみちゃん ちょっと悩んでたみたいだったから     お話きいてあげたらいいんじゃないかなあ…」 雅尚「う、うん…そそそそうするよ…    ありがとう2人とも…」 雅尚は心ここにあらずといった面持ちで、自宅へと歩いていく。 しおり「雅尚おにいちゃん、ロボットみたいな歩き方してる…」 さおり「あはは、ちょーっとからかい過ぎちゃったかなー…」 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ピンポーン ななみ「はーい…あっ おにいちゃん!」 雅尚「こ、こんにちは ななみちゃん…」 ななみ「いらっしゃい!どうぞ、あがってあがって」 勝手知ったはずの隣家の中を 雅尚はいつになくぎこちない足取りで ななみの部屋まで歩いていく。 ななみ「今日暑かったね~     ちょっと待っててね 今麦茶もってくるから」 パタパタ ななみ「はい、お待たせおにいちゃん♪」 雅尚「あ、ありがとう…えっと、今日このみちゃんは?」 ななみ「あ、ついさっき体操クラブに行ったよ」 麦茶に手もつけず、自分とも目を合わせてくれない雅尚の様子に ななみは首をかしげる。 ななみ(今日のおにいちゃん、何かちょっと変…?) 雅尚「………なっ、ななみちゃんっ!!」 ななみ「は、はいっ!?」 突然大きな声で名前を呼ばれ、ななみはビクッと硬直する。 雅尚「…あ、あのさ…    さっきさおりちゃんに偶然会って聞いたんだけど…    今日ラブレターもらったって ホント?」 ななみ「あっ…う、うん…」 ななみは恥ずかしそうに、そして少し気まずそうにうつむく。 雅尚「そっ、そうなんだ…え、えっとさ…    その男の子ってどんな子なの?    さおりちゃんは 凄くモテる子って言ってたけど…」 ななみ「え、えとえと…それは…」 雅尚「何ていう名前?ななみちゃん、その子とどのくらい仲良いの?    普段どんな話してるの?    よく遊んだりとかするの!?    ていうか、何て返事するつもりなの!?」 一気にまくしたてる雅尚に ビックリしたななみは あっけにとられてぽかんと口を開ける。 …かと思うと、ぷっと吹き出した。 ななみ「…えへへっ♪」 雅尚「!?な、なんで笑うの!?」 ななみ「あっ、ごめんねおにいちゃん。     でも安心して?ななみ、その男の子と一回もお話したことないよ」 雅尚「え!?そ、そうなの!?」 ななみ「うん。ななみ、学校で男の子と喋ること ほとんど無いし。     しおりちゃん達は、その子は女子に人気あるって言ってたけど     ななみはどんな男の子なのかも 全然知らないよ」 雅尚「そ…そっか…」 ななみ「でもおにいちゃん…その子に ヤキモチ焼いてくれたの?」 雅尚の顔が、一気に真っ赤になる。 雅尚「あ……そ、そうかも……    言われるまで気づかなかったけど、完全ヤキモチだねこれ…」 ななみ「……そうなんだ…❤」 雅尚「ななみちゃんの前で    滅茶苦茶恥ずかしい所見せちゃったね…    そりゃ笑うよね…」 ななみ「…ううん…ななみ、ヤキモチ焼かれたのって初めてだから     よくわからないけど…     何だかちょっと嬉しかったよ♪」 雅尚「……」 雅尚「…ななみちゃん」 ななみ「?どうしたのおにいちゃん?     今度は凄く真面目な顔して」 雅尚「僕、ずっとななみちゃんに    言わなきゃって思ってたことがあるんだ。    聞いてくれる?」 ななみ「…う、うん」 真剣な眼差しで見つめられたななみは、 表情を強張らせつつも 雅尚を真っ直ぐに見つめ返す。 雅尚「ななみちゃん、好きです。僕の…彼女になってください」 ななみ「……!!!」 目をまん丸にして、かああっと真っ赤になったななみだったが 次の瞬間、その大きな瞳から 大粒の涙がぽろぽろとこぼれる。 雅尚「なっ、ななみちゃん大丈夫!?」 ななみ「う、うんっ…ごめんねおにいちゃん…     ななみ、ななみ嬉しくって…!!     ななみはまだ子どもだから     おにいちゃんに そんなこと言ってもらえるなんて思わなくって…!!」 雅尚「じゃ、じゃあ返事は…」 ななみ「うんっ…ななみも おにいちゃんの彼女になりたいな…❤」 止まらない涙を両手でぬぐいながらも、 ななみは満面の笑顔を雅尚に向ける。 ななみ「えへ、嬉しいな…これでななみとおにいちゃんは     恋人同士なんだね…❤」 雅尚「うん。ごめんね、ずっと言おう言おうって思ってたんだけど    なかなか切り出せなくって…」 ななみ「ううん…あのね、ななみ…     今日のお手紙、もともとお断りするつもりだったけど、     明日ちゃんと ごめんなさいしてくるね。     『ななみには もうお付き合いしてる人がいるんです』って」 雅尚「!?お、お付き合い…!?」 ななみ「あ…言っちゃダメ?」 雅尚「…ううん、いいよ。何にも恥ずかしいことじゃないし、    隠す必要なんてないものね」 ななみ「うん…!」 ななみは両腕を雅尚の首に回し、思いきり抱きついてくる。 ななみ「あのね、おにいちゃん…ななみがもっと大きくなったら     お嫁さんにして…くれる…?」 雅尚「勿論だよななみちゃん。約束する」 ななみ「…❤❤ ありがとう、おにいちゃん…大好き!」 ~Fin~