「聖剣伝説2 another」 第19話 〜程塚 vs 魔法騎士〜 <タスマニカ共和国・レムリアン城の屋根の上> 程塚「よいしょっと」 ちなみ「んしょ…ありがと、程塚くん」 程塚「わりぃな、ちなみちゃん。屋根の上に登らせるなんて    女の子にやらせることじゃないよな」 ちなみ「ううん、そんなこと言ってる場合じゃないもの。     でも程塚君、どうしてここにスパイがいるって…?」 程塚「覚えてるか?    『ゲームだと影がないから スパイの正体がバレた』    って 遊太が言ってたの」 ちなみ「あ、うん」 程塚「それ思い出してさ。兵士達の影をよく見てみたんだ。    そしたら…たまに兵士の動きと 影の動きが違ってたんだ」 ちなみ「!!」 程塚「だから犯人は 影を操る魔法か何かを    使ってんじゃねえかって思ってさ。    その魔法を使うのに都合いい場所は…    って、ただの連想ゲームみたいなもんだけどな」 ちなみ「ううん、すごいよ程塚君。     私にはそんなの 全然思いつかなかったもの」 ボオオオッ ちなみ「あっ…!」 程塚「…へっ。俺のカンも 意外と捨てたもんじゃないな」 2人の目には 屋根に描かれた、紫色の光を放つ魔法陣と その上に手をかざす、鬼のような仮面をつけた男が映っていた。 程塚「…帝国のヤツだな?」 仮面の男「ほう、よくここがわかったな。子どもにしては鼻が利く」 程塚「一応聞いとくが…その術を止める気はあるか?    あるなら、パンチ一発で勘弁してやる」 仮面の男「…?フハハハハッ…!      この魔法騎士タナトスに脅しをかけるとは      命知らずな子どももいたものだな」 程塚「…止める気はねえってことだな。    オッケー、なら全力でボコらせてもらうぜ」 ちなみ「程塚君、気をつけて!あの人…何か普通じゃない」 程塚「わかってる。ちなみちゃんは 援護頼むぜ」 ダダダダッ ヒュン ヒュン  タナトスと名乗った男は ちなみの射った矢を素早くかわし、虚空に指で何かを描く。 すると空間が裂け、大量のモンスター達が現れた! ユニコーンヘッド「ヒヒーン!」 程塚「くっ!?」 ガキッ バキッ ちなみ「こ、こんなにいっぱい…!」 ヒュンヒュン イビルソード「キュルルルル」 キンキンッ 角のある木馬と 動く椅子に阻まれ、 程塚はタナトスに近づくことも出来ない。 ちなみの矢も、生きた剣のモンスターに叩き落とされてしまう。 タナトス「フハハハ、どうしたさっきの威勢は?      私に触れることすら出来ないではないか」 程塚「てっめえ…!    帝国の奴は どいつもこいつも    正々堂々戦うってことを知らねえのか!!」 タナトス「そんなくだらないことは知る由もないが、      戦い方は キミよりも知っているつもりだよ」 マジカルチェア「ピルルルル」 ズガッ バキッ! 程塚(くっ…こんなザコに構ってる暇ねえってのに…!) ちなみ(どうしよう、こうしてる間にもカズくんが…!) ガキッ ドガッ 程塚(必殺技ならやれる可能性はあるが…あれは何発も撃てねえ。    使うなら一発で決めるしか……そ、そうか!) イビルソード「キュルルル」 ヒュンヒュン ガキンガキン! 程塚「ちなみちゃん!こっちに来てくれ!」 タタタッ ちなみ「程塚君、これじゃキリがないよ…!」 程塚「俺に考えがある。耳かして」 ヒソヒソ タナトス「フン。浅知恵をいくら絞った所で同じだ」 ちなみ「……で、でもそれ、程塚君が危ないんじゃ…!?」 程塚「俺なら大丈夫。カズを助けるためだ。    ちなみちゃん、やってくれるか?」 ちなみ「……!!う、うん…わかった、やってみる!!」 程塚はモンスターとタナトスに向き直り、木刀を背中側に構える。 タナトス「フハハ、試してみるがいい。      その愚かな策が 私に通じるかどうかをな」 バチバチバチッ タナトス「…ほう?」 程塚「舐めんじゃねえぞ!!」 ダダダダッ 程塚「セントボルトクラッシュ!!」 ズバアアアアアッ!! 程塚は木刀全体に電流を纏わせ、 モンスターの群れに向かって 大きく振り抜いた! マジカルチェア「ピ…ピー!」 ユニコーンヘッド「ヒヒィィン!?」 バギッ グシャア! ドガァッ ガシャン ガラガラガラッ… 程塚「くっ…!」 タナトス「フハハハッ…破壊力だけは大したものだが      魔法生物どもに阻まれて、      肝心の私までは 届かなかったようだな。      それに威力があり過ぎるのも考えものだ。      そう足場まで壊してしまって、      剣使いのお前は この後どう戦う?いや…」 ドサッ 程塚「ハアッ、ハアッ…!」 タナトス「それ以前に 最早戦えないようだな。      残念だが、魔法生物の補充はいくらでも効くのだよ」 スッ タナトスは再び、新たなモンスターを呼び出そうとする。 が… タナトス(……あの女はどうした?) バシュウウウウッ!! タナトス「!?な、なにィィィ!?」 不意に足元から 金色に輝く高速の矢が飛び出し、 タナトスの身体を射抜いた!! タナトス「ば、バカな…!!?」 タナトスが視線を落とした先には、 城内から頭上に向けて 技を放ったばかりのちなみがいた。 タナトス(男が屋根に開けた穴から 城内に落ちていたのか…!      男の攻撃は 私を倒すためではなく      私を死角から攻撃するための布石…!!) グラァァッ ボタボタボタボタッ タナトス(いやそれよりも…      城の屋根を突き抜けてなお、      私に致命傷を与えるほどの矢の威力…      こ、こいつら一体…!?) 程塚「舐めんじゃねえ…つったろ…!」 タナトス「お、おのれぇぇ…このままでは済まさんぞ…!!」 タナトスが小さく何かの呪文を呟くと、 その身体は跡形もなく 煙のように消え失せた… シュウウン スウウウウッ… 程塚「ちなみちゃん…ありがとな…」 ちなみ「ううん、程塚君の作戦のおかげ…!」 程塚「仮面野郎がいなくなったら 屋根の魔法陣も消えた…    多分、兵士の魔法も解けただろ。    これでカズも大丈夫なはずだよ」 ちなみ「うん、良かった…ホントに良かった…!!」 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 <城内・王の間> 兵士A「も、申し訳ありませんんん…     陛下に刃を向けるなどとっ…!!」 兵士B「かくなる上は、この腹かっさばいてお詫びを…!」 王「何を血迷っとるか!   バカなこと言っとる暇があったら、   その勇敢な少年を 早く救護室へ運ばんか!!」 ちなみ「カズくん…カズくんっ…!!」 和樹「ち、ちなみちゃんがスパイをやっつけたんだってね…    すごいよちなみちゃん、尊敬しちゃうな…」 姫花「そんなこと言ってる場合!?    身体中キズだらけになっちゃって…    もうっ、今度こそ死んじゃうかと思ったんだからぁ…!!」 ポカッ ポカッ 姫花「もうバカバカッ…和樹のバカアッ…!!」 和樹「い、いたたたたっ!!    ひ、姫花ちゃん痛い、それホントに痛いっ…!!」 遊太「いや〜カズさん、羨ましいっすね!    2人の女の子に こんだけ心配されて!モテモテっすねえ?」 和樹「ゆ、遊太…じゃあ代わってくれよ…」 ザッ 王「この国を代表して礼を言わせてくれ。   おぬしは、おぬし達はタスマニカの英雄じゃ」 ジェマ「君の身体は 我々が責任を持って治療すると約束しよう。     他にも必要なものがあれば 何でも言ってくれ」 和樹「あ、じゃあ…名由多君の剣のこと…」 ランディ「それは僕らが 後で話しとくよ。      和樹君はとにかく、身体を治すことだけ考えて」 和樹「あ、じゃあ…お願いします…」 兵士A「いいですか?担架に乗せますよ?」 ちなみ「あ、わ、私も!私も カズくんの手当します!!」 兵士B「え、手当って…」 ちなみ「看護師目指してるんです、私!     だからお手伝い出来ます、やらせてください!!」 兵士A「そ、そういうことなら…救護室はこちらです」 タッタッタ 遊太「程塚さ〜ん、いいんすか?ついてかなくて」 程塚「この状況でお前は、よくそういうこと言える余裕があるよ…」 プリム「ねえ程塚。あんた達が戦った相手って…」 程塚「ああ、タナトスって名乗ってた仮面野郎な。    まさか 四天王だとは知らなかったけど」 ポポイ「あいつが直接乗り込んでくるとは思わなかったぜ!?     ゲシュタールがやられて、帝国も本気出してきたんかな」 遊太「ゲームだとこの時、シークが来るんすよ」 プリム「なるほどねえ…名由多君にやられてシークが動けないから     タナトスが代わりに来たって感じかしらね」 ジェマ「しかし、別の世界から来た子ども達だったとはな…     我々も 何か助力できれば良いのだが」 ランディ「ああ、ジェマ。      彼らが元の世界に戻る方法も調べて欲しいんだけど、      さっき和樹君が言ってた…名由多君」 名由多「あ、うん」 ビシュウウウン ジェマ「!?こ、これは…!?」 名由多「えと、『ブライトソード』っていうらしいんだけど。     宇宙の海で一本見つけて、     もう一本は 渡し船のカロンがくれたんです」 ランディ「帝国もこれを狙ってたんだ」 ジェマ「帝国が…!?」 ランディ「だからこの剣について、少しでも情報が欲しいと思って      今日はタスマニカに来たんだ」 フォン フォン ジェマ「なるほど…確かに古代の伝承や文献は 私の専門だが、     この光の剣は聞いたことが無いな…少し時間をくれないか?」 名由多「もちろんです!和樹君のケガも     治るのに時間かかるだろうし」 ポポイ「その間オイラ達は、この国でくつろいでていーよな!?」 程塚「ポポイ、お前はまた図々しい…」 ジェマ「無論構わんが…一つ心当たりがある」 程塚「…え?」 ジェマ「今この世界に現存する国の中で、最も歴史が古い国…     それはカッカラ王国だ」 プリム「え、そうなんだ?」 遊太「お、ランディ達が救った砂漠の国っすね!?」 ジェマ「うむ。異世界のこと、この不思議な剣のこと…     カッカラなら 何かわかるかもしれない。     勿論、確証はないが…」 ランディ「…どうする、みんな?行ってみようか?」 程塚「そうだな。このままブラブラしてるのもアレだし、    名由多君も 行きたそうな顔してるしw」 名由多「えっ!?そ、そんな顔してた!?」 程塚「ははっ、砂漠の国に 興味津々って感じだったぜ?」 遊太「まあカズさんと、あとあの様子だと    ちなみちゃんも置いてくことになっちゃいそうっすけどね」 ランディ「…姫花ちゃん。君はどうする?」 姫花「……えっ!?な、何が?」 ランディ「和樹君が心配なら、姫花ちゃんもついててあげてもいいよ」 姫花「あ、あたしは別にっ!    ち、ちーちゃんがついてるなら大丈夫でしょ!?」 プリム「…姫花ちゃん、無理しなくていいのよ?」 姫花「も、もうっ プリムまで何言ってんの!    無理なんかしてないってばぁ!!」 ランディ「……わかった。      じゃあ 和樹君とちなみちゃんには話をして、      一晩休んだら 7人で出発しようか」 ポポイ「ちぇー、せっかく三食昼寝つきで     ぐーたら生活できると思ったのにさ〜」 遊太「ポポイ、それ冒険者の台詞じゃないってw」 プリム(…やれやれ。乙女心は複雑よねえ…)                      (続く)