「聖剣伝説2 another」 第16話 〜宇宙の海の冒険〜 <現実世界・ある少年の家> ガチャ 名由多(なゆた)「ただいま!あ〜疲れた〜」 ママ「おかえり。    今日も野球部の自主練?頑張るのね」 名由多「うん、6年生になったら すぐレギュラーになりたいもん。     4年の内から鍛えとかなきゃ!     ママは 今から夕飯の買い物?」 ママ「ええ、おやつは冷蔵庫の中にあるからね。    戻るまでに ちゃんと宿題やっておくのよ?」 名由多「わかってるって!」 ガチャ バタン 名由多「えへへ、でも今日は宿題少ないから…     おやつ食べながら ちょっとだけ聖剣2やろうかな」 <現実世界・名由多の部屋> パチッ 名由多「えーと…そうそう、光の神殿をクリアした所だったっけ。     次は月の神殿がある、ここ…宇宙の海か」 カチカチ 名由多「うわっ、すごい!背景が全部宇宙みたいになってる!     このゲーム、いろんな景色があってホント飽きないな〜」 ズズ… 名由多「……ん?気のせいかなぁ。     何か背景が 段々アップになってきてる気が…」 ズズズ… 名由多「…あ、あれ?やっぱり宇宙がどんどん迫ってきてるぞ…?     え、バグった?」 ズズズズ… 名由多「…!?ていうか、この宇宙TV画面からハミ出してない!?     ちょ、ちょっとリセット…!」 名由多がリセットボタンに手を伸ばすより早く、 宇宙の海が 名由多の部屋全体を覆い尽くした。 名由多「!?うわああああっ!!?」 ズオオオオオッ!! 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 <宇宙の海> 名由多「………え?」 思わず固くつぶってしまった目を 再び見開いた名由多は、 自分が真っ暗な空間の中を 落下し続けていることに気付く。 名由多「!?わわわっ!?     お、落ちてる落ちてる!!」 ガシッ! 名由多は目にとまった突起物をとっさに掴み、落下を何とか止める。 名由多「はあっ、はあっ…な、何ここ宇宙?     ていうか、さっきゲームでいた所じゃない??」 ズル ズル… 名由多「え?ちょ、ちょっと!?」 名由多が掴んだ突起は、浮かぶ小惑星に刺さった銀色の筒。 今それが、名由多の重みで 小惑星から抜けそうになっていた。 名由多「ちょちょっと、抜けちゃう抜けちゃう!!」 ズルルルッ! 名由多「う…うそでしょーー!!?」 ヒュ〜〜〜ン ドサッ! 名由多「いっ……いっったああ…!!」 カロン「おやおや、その程度で済んだのを喜ぶべきだと思うけどねえ…」 名由多「え?」 クルッ カロン「あたしがたまたま通りかからなかったら     どこまでもどこまでも真っ逆さま…     宇宙の海に終わりは無いからねえ…     爺さんになるまで 永遠に落っこち続ける人生さ…ヒッヒッ…」 名由多「………」 名由多は話しかけてきた、緑のフードのモンスター?の顔と 自分が尻餅をついた 機械仕掛けの小さな船を見比べる。 名由多「ええっと…助けてくれて…ありがとう。     それで、やっぱりここは ゲームの中なの?」 カロン「ゲーム?何を言ってるんだね おまいさんは…」 名由多(こういうモンスター、聖剣2にいたし     ここってどう見ても さっきまでプレイしてたマップだし…     てことは、これって……夢?) カロン「……!?おまいさん、その手に持ってるの…!?」 名由多「…え?あこれ、さっき思わず掴んじゃったんだけど」 カチッ ビシュウウウン! 名由多「えっ!?わ、わわっ!?」 筒についたボタンを 何気なく名由多が押すと、 青白く光る刀身が 銀色の筒から出現する。 カロン「ブライトソードは…誰にでも抜けるものじゃないんだけどねえ…」 名由多「ブ、ブライト…!?」 カチッ シュウン 名由多がもう一度ボタンに触れると、刀身は瞬く間に姿を消す。 名由多「な、何なのこれ…?」 カロン「剣がおまいさんを選んだのさ…となると、     これもおまいさんが持ってた方が いいのかもしれないねえ」 ガサゴソ 緑のフードのモンスターは 古びた宝箱を漁ると 同じような筒を取り出し、名由多に手渡した。 名由多「く、くれるの?」 カロン「あたしみたいな老いぼれにゃ もう無用の長物だからねえ…     おまいさんが何者か知らないけど、     あたしが持ってるよりは 役に立つだろうさ」 名由多「あ、ありがとう…」 名由多(全然わかんないけど…     どうせ夢なんだし、深く考えなくてもいっか) カロン「で、おまいさん…これからどうするんだい?」 名由多(これがゲームの夢なんだとしたら…     とりあえず ゲームと同じように行動しておけばいいのかな) 名由多「えっと…月の神殿って どうやって行くの?」 カロン「なんだ、文字通りの渡りに船じゃないかい。     これが神殿へ行くための連絡船だよ」 名由多「あ、そうなんだ」 カロン「もうすぐ着くから しばらく待ってるんだね…」 <月の神殿の前> シュウウウーーッ カロン「さあ着いたよ。気をつけて行くんだね…」 名由多「あの…いろいろありがとう。     えっとそれで、キミの名前は?」 カロン「……?     あたしゃただの 渡し船のカロンだよ。     ヒッヒッヒ、あたしの名前を知りたがる奴なんて     今までいなかったよ…おまいさん、面白い子だねえ」 名由多「そ、そうかなあ?」 カロン「せっかくだ。     おまいさんの名前も教えておくれよ」 名由多「名由多だよ。名由多 耀助(なゆた ようすけ)」 カロン「ヒッヒッヒ、耀助。無事に戻ってくるんだよ…」 名由多「うん、ありがとカロン!」 タッタッタ <月の神殿内部> 名由多「うわ〜 夢だってわかってても     ホントにゲームに入ったみたいで ワクワクしちゃうなあ…     っと、わわっ!?」 物陰から現れた 空飛ぶクラゲの触手を、名由多は危うく避ける。 名由多「あっぶなあ…あそうだ、さっきの剣で!」 ビシュウウン ズバッ! 先刻のように青い刀身を出現させた名由多は クラゲを鋭く斬りつける。 セイレーングレル「キュウウ〜〜ン」 名由多「うわあ、つよ…あっ!」 ビシュウウン ドスッ! 背後から近づく別のクラゲに気付いた名由多は 素早く身体の向きを変え、カロンから譲り受けた方の筒を突き出す。 今度は緑色に輝く刀身が クラゲの身体を貫いた。 セイレーングレル「キュウ…」 名由多「すごいなあ、この剣…     えへへ、何かホントにRPGの勇者になったみたい!     よーし、どんどん進むぞー!」                      (続く)