「聖剣伝説2 another」 第10話 〜ちなみの決意〜 <マタンゴ王国・城下町> フラァッ ガシッ! よろめいて倒れる寸前のちなみを 駆け寄った程塚が支える。 ちなみ「程塚君……ありがと……」 程塚「ちなみちゃん、大丈夫か!?」 ちなみ「うん……あのね、お願い…あるの…」 程塚「なに?」 ちなみ「トリュフォーさんの所に……連れてって…」 程塚「!?まさか、手当するつもりか!?    無理だって、自分だって倒れそうなのに…!!」 ちなみ「……程塚君…お願い……助け…たい、の……」 程塚「……わかった」 ポポイ「やっぱメガネ君と同じで あれ使った後はすっげー疲れんだな」 ランディ「和樹君が技を出せなくなったと思ったら、      新しくちなみちゃんが技を…どういうことなんだろう…」 プリム「ていうかあの子、手当なんか出来るの?」 姫花「うん。ちーちゃん、看護師目指してるから。    簡単な応急処置とか 傷の状態を診るくらいは得意だよ」 遊太「てかさ…ちなみちゃんって あんな子だったっけ?」 姫花「あれ 知らなかった?滅多に怒らないだけで    怒らせるとめっちゃ怖いよ。ちーちゃん」 遊太「……もう、からかうのやめとこ…」 シュルシュル キュッ 王国民が持ってきてくれた救急セットを使い、 ちなみは程塚に身体を支えられながら トリュフォーの応急処置を終える。 ちなみ「これで……血は止まったはず…     急所は外れてたけど……     ちゃんとお城のお医者さんに…手当してもらって…」 トリュフォー「…大したもんだな、お前」 ちなみ「トリュフォーさん…!?まだ喋っちゃダメ…!」 トリュフォー「へへ、このくらい どうってことねえよ。        それより 手間かけさせちまったな」 ちなみ「ううん…私達がこの国に来たせいで     こんなことになっちゃって…!!」 トリュフォー「関係ねえよ…悪いのはあいつらだろ?       それに言っただろ?お前らの為なら 何でもしてやるって」 ちなみ「……!!」 ちなみの目からポロポロと涙がこぼれる… と、マッシュ城から大臣と兵士達が 大慌てで走ってくる。 大臣「へ、陛下!?ご無事ですか!?」 トリュフォー「おうよ。この嬢ちゃんの手当のおかげでピンピンしてるぜ。       それより 街の復旧を急げよ。       それと、こいつらに部屋を用意してやってくれ」 プリム「え?トリュフォー、でも…」 トリュフォー「無理すんな。お前らも満身創痍だろ。        国やオレらのことは気にしなくていいから        ゆっくり休んでけよ」 ランディ「トリュフォー…ありがとう」 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 <その夜・マッシュ城の客室> ガチャ ちなみ「ランディ…!!あの、トリュフォーさんは!?」 ランディ「大丈夫、心配いらないよ。      容態は安定してるってさ。      応急処置が適切だったおかげだって 先生言ってたよ」 ちなみ「よ……よかった……」 和樹「ちなみちゃん、ずっと心配してたもんね…」 ちなみ「……ねえみんな。ちょっと お話いい?」 プリム「?どうしたのよ。そんな改まって」 いつになく真剣な表情のちなみに 皆の視線が集まる。 ちなみ「私ね…元の世界に帰りたいよ。     お父さんやお母さん、友達や先生に会いたい。でも…」 姫花「でも?」 ちなみ「でもね。それと同じくらい…この世界の人達 守りたい。     今日、そう思ったの」 全員「……!!」 ちなみ「ランディ達やトリュフォーさん…     この世界にも 優しくてあったかい人達がたくさんいて。     でも、それを傷つける 悪い人もたくさんいて。     それを黙って見過ごすことなんて…私、したくない」 プリム「ちなみちゃん…」 ちなみ「だから、だからね…!     もし迷惑じゃなかったら、元の世界に帰る方法探しながら…     ランディ達が悪い人達と戦う、お手伝い出来たらなって…     ううん、手伝わせて!!」 ランディ「…危険な目に遭うかもしれないよ。今日以上に」 ちなみ「わかってる。それでも…!     このままほっとくなんて出来ないの…だから、お願い!」 ランディは少し考えた様子だったが、 ちなみの目を真っ直ぐに見つめ返す。 ランディ「……わかった。正直、グルーロードやウォーズラーとの戦いで      僕は実力不足を感じた。だから、      ちなみちゃん達が力を貸してくれるなら 凄くありがたい」 ちなみ「ランディ…!ありがとう!!」 ランディ「でも 本当に危険だと感じたら、すぐ逃げて。      そしてこれ以上 戦いに参加するのは無理だと感じた時も      すぐに言って欲しい」 ちなみ「うん、わかった!約束する!あ…でも…」      喜びかけたちなみだったが、クラスメート達を振り返る。 ちなみ「これ、私一人の考えで…     みんなの気持ちは聞いてないから…」 姫花「なーにバカなこと言っちゃってんの?親友でしょ?」 和樹「水くさいこと言わないでよ。    ちなみちゃんを独りになんか するわけないでしょ」 遊太「ぶっちゃけ俺らも、トリュフォーが刺された時    めちゃくちゃムカついたからね!?」 程塚「俺達も戦うよ。ちなみちゃんと一緒に、ランディ達と一緒に」 ちなみ「みんなぁ…!ありがとうっ!!」 ガバッ!と、泣きながら姫花に抱きつくちなみ。 プリム「ふふっ、改めてよろしく!…って、感じかしらね」 ポポイ「そうそ、マジ頼もしいぜ!     お嬢ちゃんが今日出したあの技、すごかったしな〜     ビシュッ!って、すっげーはえーの!」 ちなみ「あ、でもあれ もしかしたら…     私もカズ君みたいに もう使えなくなっちゃってるかも…」 ランディ「まあそれは、今考えても仕方ないよ。      それより明日も何が起こるかわからないし、みんなゆっくり休んで」 姫花「そだね!それじゃ、おやすみなさ〜い」 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 <翌日・マッシュ城のトリュフォーの部屋> ランディ「…そっか。古い文献にも これといった記述は無しか」 トリュフォー「ああ…白い竜の 次元を越える能力に関する記述もな。        わりぃな、力になれなくて」 和樹「いえ、ありがとうございます。調べてくれて」 トリュフォー「あ、でもな…フラミーの一族とは関係ねえんだが        一つだけ気になる記述が見つかったぜ」 姫花「な、なにっ!?」 トリュフォー「異なる世界…それの存在を 示すような記録があった」 全員「!!!」 遊太「まさか、地球のことが書いてあったんすか!!?」 トリュフォー「いや…お前らから聞いた世界の話とは 大分違ってたな。       情報が相当断片的で 詳しくはわからねえんだが…       勇者が魔王と戦ってる世界…そこから流れ着いた何者かが、       遥か昔に存在したような記録があった」 和樹「…遊太、聖剣2のゲームに 魔王っていないよな?」 遊太「だねぇ…ただ、俺らがこっちに来てから    大分ゲームと違う展開になってきてるしな〜〜〜    う〜〜〜ん、難しい話はわかんないっす!!」 ちなみ「それが聞けただけで充分です。     トリュフォーさん…本当に、本当にありがとう」 ちなみは、ベッドに横たわるトリュフォーの手を握りしめる。 トリュフォー「こっちこそ…お前らと会えて 楽しかったぜ。        またいつでも遊びに来いよな」 ちなみ「うん…!必ず、必ずまた来ます!」 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 <マタンゴ王国・城下町> 程塚「さて、これといった手がかりも無かったけどよ…どうする?」 ちなみ「ねえ、ランディ達は     私達と会わなかったら どうするつもりだったの?」 ランディ「ああ…僕たちは聖剣を完全に目覚めさせる為に      世界中のマナの神殿を回ってたんだ。      聖剣とマナの種子を共鳴させれば、剣が覚醒していくからね」 ポポイ「あと行ってねーのが、光、月、木…3つだったっけ?」 ちなみ「じゃあ、そこに行こ!     世界を守るのに 大事なことなんだよね?」 プリム「いいの?元の世界に帰る方法は 後回しで」 姫花「まあどっちみち、もう手がかり無くなっちゃったし」 和樹「そそそそれに、神殿で何か    新しい手がかりが見つかるかもしれないしね!」 程塚「…カズ、お前は聖剣と種子が共鳴するとこ見たいだけだろ」 和樹「!?な、何でバレたの!?」 ランディ「あはははっ…じゃあ次は、光の神殿がある黄金島に行こうか」 ちなみ「うんっ!あっ……あ、あの…」 ポポイ「ん?どした、お嬢ちゃん?」 ちなみ「あの、風の太鼓でフラミーちゃん呼ぶの…     私やってみても……いい?」 ランディ「あはは、勿論いいよ?はい」 ちなみ「あ、ありがとう…!」 ドコドコドコ ちなみ「フーラミーーちゃーーーん!!」 キュイキュイーン! 和樹「ちなみちゃん、何か凄く元気になっちゃったねw」 程塚「ああ…はりきり過ぎて 息切れしなきゃいいんだがな…」 遊太「程塚さぁ〜ん、何か最近、    ちなみちゃんにやたら優しいっすねえ??」 程塚「!?ばっ…バカなこと言ってないで、とっとと乗るぞ!!」                   (続く)