DQ5 ビアンカ・王女SS「素敵な結婚記念日」 <グランバニア城・双子の部屋> ビアンカ「ほーら、いつまで寝てるの!      とっくにご飯できてるわよ、さっさと起きなさい!」 バサッ レックス「うーん…まだ眠いよお…」 タバサ「あ、お母さん…おはよー」 ビアンカ「はい、おはよ!早く顔洗って歯磨いちゃいなさい!      お父さんも待ってるんだから!」 <グランバニア城・廊下> レックス「ふわあ…タバサよく眠くないねー」 タバサ「わたしはお兄ちゃんと違って いつも早寝早起きだもん!     知ってる?夜更かしはお肌に悪いんだよ?」 レックス「だってミニモンにトランプでなかなか勝てなくてさー」 タバサ「あれ?サンチョ、そんなに急いでどうしたの?」 パタパタ サンチョ「おお、お二人ともおはようございます」 タバサ「わあ、甘くていい匂い…どうしたの、その生クリーム?」 レックス「わかった、ケーキ作るんだね!      サンチョ、ぼくイチゴのいっぱい乗ったヤツがいいなー!」 サンチョ「ほっほっほ…いけませんよ、      これは坊ちゃんと ビアンカ様のためのものなんですから」 タバサ「お父さんとお母さんの?でもどうして?     二人ともお誕生日は まだまだ先よね?」 サンチョ「おや、知りませんでしたか?      明日はお二人の結婚記念日なんですよ」 レックス「ええーそうなの?」 タバサ「全然知らなかった…」 サンチョ「無理もありません…      お二人がグランバニアに戻られてから、初めての記念日ですから」 タバサ「わたし達も、何かしてあげた方がいいのかな?」 サンチョ「そうですねえ…      何かプレゼントでも差し上げたら、喜ばれると思いますよ」 レックス「プレゼントかあ…」 サンチョ「それじゃ、私は明日の準備がありますので…」 パタパタ レックス「どうする?タバサ」 タバサ「お父さんとお母さんのお祝いしてあげたいけど…     お兄ちゃん、今月のお小遣い どのくらい残ってる?」 レックス「ううっ…今月のは ほとんど使っちゃった…」 タバサ「実はわたしも…」 レックス「じゃ、じゃあ自分達で何か作るっていうのは?」 タバサ「でも明日だよ?間に合うかなあ…」 レックス「うーん…」 タバサ「別に物じゃなくてもいいんじゃないかなあ…」 レックス「肩たたきとか?」 タバサ「それこの前の母の日にやった…そうじゃなくて、     何かもっと 二人がすごく喜んでくれるような…」 レックス「ねえ、ぼく思うんだけど      お母さんっていっつも忙しそうだよね」 タバサ「うん…魔王と戦ってる時はそのことばっかりだったし     魔王をやっつけた後も おうちのこととか毎日大変そう…」 レックス「お父さんも王様のお仕事で忙しそうだしねー」 タバサ「あっ、わかった!     じゃあ、二人にデートをプレゼントするっていうのは?」 レックス「で、でーと?」 タバサ「ほら、お母さん達って結婚してわたし達産んで     その後すぐ石にされちゃったから     あんまり二人で一緒にいられなかったらしいじゃない?     で、今は今で二人ともいろいろ忙しいし…     だからちゃんとしたデートって したこと無いんじゃないかなあって…」 レックス「あっ、それだったら ぼくピッタリの場所知ってるよ!      お城の近くの森の中に すっごくキレイな泉があるんだ!」 タバサ「あ、わたしも行ったことある!お花もいっぱい咲いてて、     とってもステキな場所なのよね!」 レックス「決まりだね!じゃあ明日、二人を泉に連れていこうよ!      勿論ナイショでね、その方がビックリするだろうから!」 タバサ「じゃあ私がお母さんを連れ出すから     お兄ちゃんはお父さんをお願いね。     で、二人が泉に着いたら わたし達はパッといなくなって     二人っきりにしてあげるの!」 レックス「いいね!じゃあ明日さっそく作戦決行だ!」 ビアンカ「こらー!二人ともいつまでお喋りしてるの!      早くご飯食べちゃいなさい!」 レックス・タバサ「は、はーい…」 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 <翌日・グランバニア周辺の森> ビアンカ「もうっ、どうしたのタバサったら?      こんな森の奥まで行ったら危ないわよ?」 タバサ「いいからついて来て!     お母さんに どうしても見せたいものがあるの!」 ビアンカ「はいはい、わかったからそんなに引っ張らないの…」 ガサガサ タバサ「…ねえ、お母さん?」 ビアンカ「なあに、タバサ?」 タバサ「お母さんって、今でもお父さんに恋してる?」 ビアンカ「えっ?!い、いきなり何言い出すの?!」 タバサ「だってお母さんはお父さんのことが好きで     ずっと一緒にいたいから結婚したんでしょ?     でも二人とも忙しくて     あんまり一緒にいられないから、寂しくないのかなあって…」 ビアンカ「う、うーん…そうねえ…」 タバサ「好きな人だったら、いつも一緒にいたいって思うものなんでしょ?」 ビアンカ「でも、お母さんは幸せよ。      可愛い子どもが二人もいて、優しい夫もいて…      大切な人達と ずっと一緒に暮らしていられるんだから。      確かに毎日ご飯の用意したり 洗濯したりするのは大変だけど      家族のためだって思えば、全然辛くなんかないの。      二人だけの時間も大切だけど、      今は家族が笑顔でいてくれることが      お母さんにとって一番の幸せなのよ。      きっと お父さんも同じ気持ちだと思うわ」 タバサ「ふーん…」 ビアンカ「って、もう何言わせるのよこの子ったら!恥ずかしいじゃない!」 ガサガサッ タバサ「?!何、このイヤな感じ…」 ビアンカ「!!タバサ、危ないっ!!」 ズシャッ モンスター「キシャー!」 ビアンカ「つっ…!リ、リントブルム…こんな所に…      タバサ、怪我は無い?」 タバサ「う、うん…でもお母さん、足…」 ビアンカ「だ、大丈夫よ、大したこと無いわ。下がってなさい、タバサ」 シュッ ビアンカ(まいったなー、戦うなんて思ってなかったから、      護身用の毒蛾のナイフしか持ってないわ…      でも、やるしかないか!) シャッ ズバッ タバサ(どうしよう…わたしも何か 武器持ってくるんだった…) シャッ ズシャッ ビアンカ(はあっ、はあっ…      しばらく戦ってなかったから、すっかり腕が鈍ってるわ…      足も思うように動かないし…け、結構やばいかも…) タバサ(お母さん、あんなに足引きずって…     このままじゃやられちゃうよ…     助けて、お兄ちゃん…お父さん!!) リュカ「はああっ!!」 ズバッ モンスター「ギ…ギエー!!」 ドサッ レックス「タバサ!お母さん!」 リュカ「二人とも、大丈夫か?!」 タバサ「お、お兄ちゃん…お父さん…」 ビアンカ「あはは…あ、あんまり大丈夫じゃないかも…      でも来てくれて助かったわ…ありがとう、リュカ…」 タバサ「二人とも、どうしてここに…」 レックス「ごめんタバサ!お父さんに作戦のことバラしちゃった…      二人ともなかなか来ないから心配になって、つい…」 ビアンカ「?作戦って何?」 タバサ「う…うええええん!!」 ビアンカ「タ、タバサ?!どうしたの、泣かなくていいのよ?      ほら、お母さん何ともないから!」 タバサ「ごめんなさい、お母さん…!!     今日はお父さんとお母さんの結婚記念日だから、     お祝いに 二人にデートをプレゼントしようと思って…     この先にキレイな泉があるから、     そこで二人っきりにさせてあげようとしてたの…」 ビアンカ「そ、そうだったの…」 タバサ「でも…プレゼントどころか、二人に迷惑かけちゃって…     私のせいでお母さんに怪我までさせて、     本当に、本当にごめんなさい!!ふえええええん!!」 レックス「あ、あのね…      二人を泉に連れて行こうって言い出したのは ぼくなんだ…      だからタバサを叱らないであげて…」 ギュッ ビアンカ「いいのよ、タバサ、レックス…      二人とも私達のために 一生懸命考えてくれたのよね?      ありがとう、お母さんとっても嬉しいわ…」 タバサ「ぐすっ、ひっく…」 リュカ「レックス、その泉っていうのは     さっき連れて行ってくれた所でいいんだね?」 レックス「う、うん…でもお母さんが この怪我じゃ…」 リュカ「平気だよ、ほら!」 ヒョイ ビアンカ「きゃっ!ちょ、ちょっとリュカ?!」 リュカ「せっかく子ども達が用意してくれたプレゼントなんだ…     無駄にしちゃ悪いだろ?」 ビアンカ「そ、そりゃそうだけど…」 リュカ「よし、じゃあ行くよ!レックスとタバサもついておいで!」 レックス「う…うん!行こう、タバサ!」 タバサ「え?う、うん…」 ビアンカ(こ、子ども達の前でお姫様抱っこなんて…      こんなことならダイエットしとけば良かった…      お、重くないかしら…) <森の奥の泉> リュカ「さあ、着いたよ」 ビアンカ「わあっ…本当にキレイな所ね…」 リュカ「昔キミのいた 山奥の村に少し似ているかもね」 ビアンカ「ええ…何だか懐かしい感じがするわ」 クイクイ ビアンカ「ん?どうしたの、タバサ?」 タバサ「お母さん…本当にごめんね…」 ビアンカ「何言ってるのタバサ!すごくステキなプレゼントだったわよ?」 タバサ「だけど…まだ足痛いでしょ?」 ビアンカ「でもそのおかげで、こうしてお父さんに抱っこしてもらえてるのよ?      うふふ ちょっと恥ずかしいけどね」 タバサ「で、でも…」 ビアンカ「ねえ知ってる、タバサ?サラボナでの結婚式の時も      こうやってお父さんに 抱きかかえてもらったのよ。      だからこうしてるとあの日を思い出して      とっても幸せな気分になるわ。      本当にありがとう!あなた達のおかげで、最高の結婚記念日になったわ!」 タバサ「お、お母さん…」 レックス「やったねタバサ!      ちょっと作戦と違ったけど、お母さんに喜んでもらえて!」 タバサ「ふ…ふええええええん!!」 ビアンカ「ほらほら、もう泣かないの!」 レックス「そ、そうだよタバサ、お母さん嬉しいって言ってるよ?」 タバサ「う、うん…ぐすっ…」 ビアンカ「うふふ、私達は優しい子ども達を持って幸せね…」 リュカ「そうだね…     ビアンカ、向こうの方に珍しい花が咲いてるよ、行ってみようか?」 ビアンカ「ええ…ね、ねえリュカ それより腕疲れない?」 リュカ「ん?そろそろ降ろしてあげた方がいい?」 ビアンカ「ううん…もう少し このままがいいな…」 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 <数日後、ビアンカとリュカの部屋> タバサ「お父さんお母さん、私達に用事ってなあに?」 ビアンカ「うふふ、この前二人から ステキなプレゼントもらったでしょ?      だから、今度はお母さん達から あなた達にお返しがあるの」 レックス「え、ホント?やったー!」 リュカ「ほら、レックスにはこれだよ」 レックス「わあ、すごく強そうな剣だね!」 リュカ「それはね、お父さんのお父さん…     つまりレックスのお爺ちゃんが使ってた剣なんだよ。     お父さんが子どもの時も、大人になってからも、     ずっとお父さんを守ってくれた剣なんだ」 レックス「へえーすごいや…絶対大事にするね!ありがとう、お父さん!」 ビアンカ「はい、そしてタバサにはこれ…」 ファサッ タバサ「あ…これって、もしかして…」 ビアンカ「そう、お母さんが結婚式の時に使ってた シルクのヴェールよ。      うふふ、やっぱりまだブカブカね」 タバサ「いいの?わたしがもらっちゃって…     これ、すごく大切なものなんでしょ?」 ビアンカ「そうよ、だからこそあなたにもらって欲しいの。      あの時のお母さんと同じくらい、      タバサにも幸せになって欲しいからね」 タバサ「ありがとう、お母さん…     これ被ってると、何だかドキドキしてくる…     お母さんの気持ちが 伝わってくるからかな?」 ビアンカ「うふふ、タバサがお嫁さんになる時に使ってちょうだいね」 タバサ「でもね、お母さん…わたし 今でも充分幸せよ。     お父さんもお母さんも優しいし、お兄ちゃんもいるし…     わたし、お母さんの子どもで良かった…」 ビアンカ「私も、あなた達のお母さんでいられてとっても幸せよ」 タバサ「えへへ…お母さん、だーい好き!」 〜Fin〜